プロローグ

ーー5月某日、区立図書館の前。ヒゲの中年男性が向こうからやって来る少女に目を止める。

スカボロ:あれ?カコちゃんじゃない?

カコ:おじさーん!どうしたの?こんなところで。

スカボロ:どうしたもこうしたも、これでも研究者だからね。ちょっと調べものだよ。ところでキミのほうは?

カコ:う~ん。ま、暇だから。ねえ、信じられる⁈ゴールデンウィークまるまる休む部活なんて!

スカボロ:ま、今はスポコンの時代じゃないからね。ありじゃない。

カコ:そうなんだ。中学ん時は練習のない日なんて考えられなかったけど、うちの高校の部活、なんか緩いんだよね。おかしくなりそう。それに家にいてもお姉ちゃんが何かと言えば受験だ受験だってうっとおしいし。

スカボロ:ああ、今年はリエちゃんが受験かぁ。そりゃ大変だな。

カコ:そう、お姉ちゃんイライラしているし、お母さんまでキリキリしちゃって。だから家にいてもつまんないから本でも借りてみようかと思って。

スカボロ:そうか。でもつい最近まではキミの高校受験で大変だったんだから、まあ、お互い様でしょ。

カコ:お互い様じゃないよ。高校受験の時だってお姉ちゃんの時と私の時じゃお父さんもお母さんも態度が全然違うの。それにサーには二人ともうんと甘いし…ほんと、真ん中って損!

スカボロ:わかるよ、ボクも三人兄弟の真ん中だから。まあ、損だよね。

カコ:凄い損してる!

スカボロ:でも古今東西の小説なんかじゃ、女姉妹の次女って結構主役が多いんだよ。そうだ!キミにぴったりの本があるよ。

ーー二人は開架図書館に入る。スカボロは書棚から一冊本を持ってきて渡す。

カコ:若草物語?これ、子ともの読む本でしょ。小学校の教室で見たもの。おじさん、バカにしてる?

スカボロ:ばかになんかしてないよ。そもそもこれは大人が読むために罹れたんだよ。ただ、主要人物が10代の女の子達なのと子どもにもわかりやすい内容なので、いつしか児童書の中に並べられるようになったんだ。キミが小学校で見たのは、おそらく子ども用に編集してあったと思うよ。内容覚えてる?

カコ:覚えてるも何も、読んだことないよ。本があったのを覚えているだけ。

スカボロ:だったら騙されたと思って一度読んでみない?たぶん共感すること多いと思うから。

カコ:う~ん。じゃ、まあ、おじさんがそう言うなら、読んでみてあげようか。

ーーカコ、スカボロから本を受け取ると貸し出しカウンターへ向かう。

スカボロ:カコちゃん、読み終わったら感想聞かせてね。

カコ:は~い。

ーースカボロは閲覧室に向かう。カコはは本を借りて図書館を出る。